フランスのラグジュアリーブランド『エルメス(Hermès)』における、たくさんのフレグランス。
コスメカウンターにずらりと並ぶ香りの数々は、高級ブランドらしいクオリティの高さと、品格ある匂い立ちがとても魅力的です。
そんな『エルメス(Hermès)』は、これまでに「カレーシュ」「テール ドゥ エルメス」「オー デ メルヴェイユ」など、メンズ・レディスの両方で名作を生み出してきました。
そしてもう一つ、世界中で大人気のシリーズがあります。
2003年に発売が開始された、通称「庭シリーズ」です。
第一作目は当時のエルメスの初代専属調香師である、ジャン=クロード・エレナが制作した「地中海の庭」でした。
こちらは世界中で大ヒットを記録しています。
その後は「○○の庭」と題した香りを続々と発表、2023年までには全7作が揃いました。
今回ご紹介するのは、そんな庭シリーズの7作目である「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」です。
庭シリーズでは、世界のどこかに存在する「美しい風景」をテーマとしています。
最新作の「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」では、ギリシャ・エーゲ海に浮かぶ島の「シテ―ル(Cythère)」が舞台となりました。
今回は各国で大人気の「庭シリーズ」の概要とともに、「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」の香りをご紹介していきたいと思います。
芸術性に初めて重きを置いた「庭シリーズ」。しかし使いやすいトワレで人気を博す

「庭シリーズ」の第一作目は、ほとんど革命的だったといいます。
というのも、発売が開始された2000年代初頭までは、いわゆる「大衆的な香水」「売れる香水」の調香がメインだったためです。
しかし『エルメス(Hermès)』は、調香師のジャン=クロード・エレナに自由な創作をするよう依頼します。
マーケティングテスト(発売前の商品を消費者に試してもらうこと)はせず、また香料の金額制限もかけず、調香師の技とインスピレーションにそのすべてを賭けたのです。
彼の造り出した香りは、男女や年齢を越えた、嗅覚に訴えかけるものだったのでしょう。
マーケットや大衆に迎合しない香りだったにも関わらず、エレナの「地中海の庭」は大ヒットを記録しました。
地中海の壮大なイメージを、軽やかな風のように香らせた「地中海の庭」。
絵画のように芸術的な香水として、以後はシリーズ化されていきます。
※現在では以下の香りがラインナップしています。
2003年:地中海の庭
2005年:ナイルの庭
2008年:モンスーンの庭
2011年:屋根の上の庭
2015年:李氏の庭
2019年:ラグーナの庭
2023年:シテールの庭
なお2019年の「ラグーナの庭」、2023年の「シテールの庭」は、ジャン=クロード・エレナからバトンタッチされた専属調香師、クリスティーナ・ナジェル(女性)が調香を担当しています。
エルメスのプライドやモノづくり精神を表現したシリーズとして、揺るぎない地位を築いた庭シリーズ。
優れた芸術性を持つ一方、すべてがオードトワレで着けやすい、というのも人気を博している理由です。
エーゲ海の美しい島で漂う、シトラスと穀物、そして郷愁の香り

シテールの庭(Un Jardin à Cythère)オードトワレ
シングルノート:ベルガモット、レモン、ピスタチオ、オリーブツリー、グリーンノート
発表年:2023年
調香師:クリスティーナ・ナジェル
対象性別:ユニセックス(女性寄り)
「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」はシングルノートですが、島の一日のように、時間とともに緩やかな変化があります。
開幕ではまず、瑞々しいシトラスの香りで華やぎます。
少し甘みのあるベルガモットに、きりっとレモン。そのフレッシュな香りには「島の朝」を見るようです。
エーゲ海の島に昇る美しい朝日、これを嫌うのは難しいことです。
このように「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」のトップノートは、誰もが「気持ちいい」「好き」と思うような、ポジティブな感情を引き連れてスタートします。
20分〜30分後には「オリーブ石けん」のような、ソーピィな香りに変化します。
それもかなり上質なソープです。
リゾート先で、まだ太陽の明るいうちに浴びるシャワーのような、リラックス&幸福感を思わせてくれます。
ここでも先のシトラスは余韻を残しています。
シトラスとソープの香りが肌の上で柔らかく残り、まるでアロマキャンドルのように、じっくりと溶け出していくのです。

ここまでは中性的な印象ですが、ラストノートにかけては一気にフェミニンな表情に。
オリーブをまとった石けんの香りは少しずつパウダリーに変化していきます。
しかしただのパウダリーではないのが、『エルメス(Hermès)』らしいところです。
つけたてから2時間ほど経つと、香りが穀物の「ふくよかさ」を含んでいきます。
シリアルの香り、とも言えるかもしれません。
オリーブやナッツ、ウッディの香りは控えめながら、背景にしっかりといます。
もう朝の雰囲気はありませんが、代わって現れたのは黄金の穀物畑。
島の一日に心癒されながら、たくましい生命の息吹を目の当たりにしている、というイメージです。
全体を通しては、ギリシャのシテール島に「実際に立っている」というよりは、「回想」という言葉が合います。つまり郷愁の香りです。
事実、調香師のクリスティーナ・ナジェルは、ギリシャ出身であり『エルメス(Hermès)』のクリエイティブ・ディレクターである、グレゴリス・ピルピリスに「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」試香してもらったところ、彼は第一声で「ああ、まさしく故郷の香りだ」と言ったそうです。
万能香水、『エルメス(Hermès)』らしい清潔感とクオリティ

庭シリーズで共通しているように、「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」は、つけやすい“オードトワレタイプ”となります。
ナチュラルで清潔感のある香りもさすがのもの。
中盤以降がやや女性的ではありますが、年齢層・性別を問わない万能香水と言えます。
オードトワレながら、その持続時間はオードパルファム並みに長いです。
つけたての強度はだんだんと落ちていくものの、およそ10時間ほどは肌の上を漂うでしょう。
季節は春夏に、シトラスの香りが気持ちよく冴えると思います。
しかし秋や冬でも構いません。
コートの中で香る「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」は、何とも言えない温かみと清潔感にあふれていて、「郷愁」の部分をより引き出してくれると思います。
ファッションは軽装からフォーマルまで何でもOK。
どの場面にも似合う、真の万能香水です。
年齢層も問いませんが、年齢を重ねた人には特にお似合いになるでしょう。
清潔感のほかに「庭シリーズ」らしい落ち着きとムード、つけやすさがありますので、香水を一周した、という人にも納得していただける香りだと思います。
まとめ
『エルメス(Hermès)』の最新作であり、庭シリーズの第7作目、「シテールの庭(Un Jardin à Cythère)」。
こちらは「ナイルの庭」に続く、“間違いのない香水”と呼ばれていくのかもしれません。
温かみのあるシトラスとふわっと香るオリーブ、穀物の香りは、私たちを遠いギリシャにいざなってくれます。
『エルメス(Hermès)』が初めてだという方も、このアロマティックで美しい香りにトライしてみてください。

