『Reminiscence(レミニッセンス)』という聞き慣れないブランド。

実はフランス発のこの小さなブランドには、発売から45年経った今でも世界中の人からラブコールを受ける秘密の名香があります。

その名も「Patchouli(パチュリ)」というオードトワレ。至ってシンプルな飾り気のないフレグランスです。

しかしながら「Patchouli(パチュリ)」は巷で“幻の香水”と呼ばれ、日本ではオンラインで常に少数のみが入荷、そしてすぐに売り切れてしまうという、強固なファンを持つ香りでもあります。

出典:『Reminiscence(レミニッセンス)』公式ホームページより

『Reminiscence(レミニッセンス)』は1960年代後半、ヒッピーをしていた時にロンドンで出会ったブランドのオーナーでありデザイナーでもあるゾエとニノの二人が立ち上げました。

現在ブティックは南仏のカンヌに一店舗が存在するのみ。

ハイブランドでもなければ、SNSにも全く力を入れていない『REMINISCENCE(レミニッセンス)』。

1970年のブランド誕生とともに発売された「Patchouli(パチュリ)」はその香りの良さから世界中に広まり、今でも『Reminiscence(レミニッセンス)』のアイコン的アイテムとなっています。

「Patchouli(パチュリ)」がこうして広まったのは、その素晴らしさから来るごく自然なことだったのでしょう。

今回は、無名のブランドをワールドワイドに押し上げる力を持った、“幻の香水”「Patchouli(パチュリ)」の魅力について迫ってみたいと思います。

一体、このオードトワレの何がここまで人を惹きつけるのでしょうか。

深い森林の香り、寺院の香り

Patchouli(パチュリ)オードトワレ

トップノート:バージニア産シダー、ジャワ島産パチュリ、

ミドルノート:ハイチ産ベチバー、オーストラリア産サンタル

ラストノート:インセンス、バニラ、ホワイトムスク、トンカビーン

発表年:1970年

調香師:不明

対象性別:ユニセックス

かなりのインパクトを残す「Patchouli(パチュリ)」のトップノート。

その幕開けは、率直に言うと“土臭さ”から始まります。

“土臭さ”と聞くと、ちょっと遠ざけたくなってしまいますが、もっと大地そのものを思わせるアーシーな印象です。上質なオーガニックの土、肥沃な土壌を思わせる力強い香りでもあります。

実はパチュリ自体が“湿った土の香り”、“墨汁の香り”がすると言われていて、『CHANEL(シャネル)』をはじめとしたハイブランドのフレグランスには欠かせない香料なのです。

そのほとんどがミドルノート以降、終盤に用いられるパチュリの香料ですが、「Patchouli(パチュリ)」においては最初から強く香ります。

シダーの香りも加わってか、次第に“焚き火”のような表情に。

ところがこの骨太で、頑丈なトップノートは中盤以降に激変します。

サンタルのマイルドな香りが重なって、徐々にお香のような薫香へと変わるのです。

出典:『Reminiscence(レミニッセンス)』公式インスタグラムより

それはまるで、苔と木々に囲まれた南アジアの朽ちた寺院に迷い込んだかのよう。

人類の残した遺跡と、それさえも取り込もうとする自然の力強さと美しさ。

そこではきっと、たくさんのドラマが生まれたのでしょう。黄金期の姿はもう見えなくとも、風化された姿もまた一興。

とてもフランス製とは思えないほどオリエンタルの真髄を突いた、幽寂な「Patchouli(パチュリ)」。

奥深さと共に、心穏やかに、過去でもなく未来でもない“今”に集中したくなるような荘厳な香りです。

そしてラストノートも素晴らしいものがあります。トップノートの骨太さは姿を消し、極楽浄土のようなふんわりとしたバニラが対峙してきます。ホワイトムスクとの相性も良く、遺跡から雲の上に飛び乗ったようなフワフワとした居心地の良さ。

このラストノートは1970年代に創られた香水としては、かなり斬新なものだったと思います。2020年代の今現在でもまかり通る、この素晴らしく洗練されたラストノートは、10人いたら10人が「良い香り」と認識するでしょう。

「Patchouli(パチュリ)」は、キラキラとした活力に満ちあふれたハッピーな香水ではありません。

ダーティーな暗さともまた異なり、例えば木々から漏れる曖昧な光に満たされた森林のような、古いオーディオのボリュームを絞るように明度を段々と下げてゆくような、淡く柔らかな「ダーク・ニュアンス」です。

ミステリアスで、熱を感じない気だるい空気。

アートな1本、というよりも、ただ香っているだけで心が落ち着き、心なしか瞑想へいざなってくれるような、貞淑ささえ感じる知的なオードトワレです。

ヨーロッパの作家さんがまとっていそうな香りでもあります。

秋冬のシーズンに。瞑想的で神秘的な香り

「Patchouli(パチュリ)」の香りのタイプはオリエンタル・ウッディです。

やはりどのブランドの香りにも似ていません。

なぜ、無名のブランドの「Patchouli(パチュリ)」がここまでロングセラーになっているのか。

それはやはり、圧倒的なオリジナル性にあると思います。

これほど深いオリエンタル・ウッディの香水は他に類を見ないものですし、「OOらしい」という形容詞が当てはまらないからです。

圧倒的なオリジナル性と、極上の香り。

「名香」として人々に認知されるには、広告も華美なパッケージデザインもいらない。

その香りの実力だけで45年も語り継がれているのが「Patchouli(パチュリ)」のすごさです。

さて、この香りは男女ともに楽しんでいただけるユニセックスタイプのオードトワレです。

割とキャラクターの強いフレグランスではありますので、なるべくならプライベートシーンで使用するか、個性が問われる職業の方に向いていると言えます。

ただ「Patchouli(パチュリ)」の薫香をよりお楽しみいただくためには、空気が乾燥していることが大事だと思います。湿気のない季節の方が、ミドルノート以降の素晴らしい拡散性をより満喫できることでしょう。

またセクシーさを売りにした香りではないので、どちらかというと露出の少ないファッションに良く似合います。

爽やかなだけじゃ物足りない、知性のにじむ熱いハート、そして他者と競争するよりも、自己を律して力強く在りたい。

そんな方に似合う、成熟度の高い潔い香りです。

まとめ

20代の方がまとっても、70代80代の方がまとっても“カッコいい”雰囲気を醸し出すことのできる「Patchouli(パチュリ)」は、まさに唯一無二のフレグランス。

その浮世離れした香りは、「大衆に寄せたくない」という個性を求めている方にもピッタリの1本です。

このように、世界には隠れた名香がまだまだたくさん存在します。

そんな“幻の香水”を発掘し、香りの世界に浸るのはどこか“アート鑑賞”にも似ています。

目に見えない香りの世界ではありますが、実に奥深く、年齢問わず長きに渡って堪能できる分野でもあります。

「Patchouli(パチュリ)」の味わい深さはその一助となってくれるに違いありません。