世の中には「水」をイメージした香水が存在するのをご存知でしょうか?
みずみずしく透明感のあるその香りは、快適な着け心地で暑い時期につけても嫌な気持ちになりません。
そんな「水」にオマージュを捧げた香水があります。
イッセイ ミヤケの、「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ イッセイ)」です。
この香りが生まれたのは1992年。
イッセイミヤケは、甘く官能的な香水だけを量産する香水業界に「一石を投じた」のです。
これは、日本人デザイナーの三宅一生氏と、天才調香師のジャック・キャバリエ(現ルイ・ヴィトンの専属調香師)がタッグを組んで発表した香り。
“水”そのものを表現し、「オゾンノート」という新たなジャンルを開拓した香りでもあります。
ライトに香るということと、上品で洗練された「オゾンノート」は、香水に慣れていない人たちにも手に取りやすいものでした。
現在では「オゾンノート」のバリエーションもたくさん増え、「イタリアのコモ湖のような香り」や「カリフォルニアの海岸の香り」など、もっと具体的なイメージのフレグランスを体験することができます。
今回は“水”にインスパイアされた「原点の香り」、「L’EAU D’ISSEY(ロードゥ イッセイ)」をご紹介します。
三宅一生と香水

三宅一生氏は香水をあまり好まなかったといいます。
香水は日本文化において「他人の領域を侵害するもの」と認識していたからだそうです。
しかし、ブランドでのファーストフレグランスを製作するにあたって、彼はパリの香水開発ディレクターにこう伝えます。
「日本の四季の中で、冬が過ぎ、春が訪れる時の“スプリングウォーター”のような自然な香りを生み出してほしい」
そうしてディレクターは三宅氏に敏腕調香師、ジャック・キャバリエを紹介するのです。
ジャック・キャバリエは現ルイ・ヴィトンの専属調香師で、過去作にはブルガリ・プールオムなど名作を担当した人物。
彼はその後、日本を訪れることになります。
調香師の中には日本文化に感銘を受け、日本の自然に魅了される人が多いのですが、キャバリエ氏もその一人でした。
過去にはモネといった偉大な画家も日本の庭園に魅了されたといいます。
「L’EAU D’ISSEY(ロードゥイッセイ)」は、そんな日本の“水”のある風景を、フランスの芸術家によって新たに解釈された新しい香りなのです。
自然を賛美した、新月のような香り

L’EAU D’ISSEY(ロードゥイッセイ)オードトワレ
トップノート:ロータス、フリージア、シクラメン、ローズウォーター、ピオニー、メロン、カロン
ミドルノート:カーネーション、ホワイトリリー、シャクヤク、スズラン
ラストノート:オスマンサス、チュベローズ、アンバー、ムスク、サンダルウッド、シダーウッド
発表年:1992年
調香師:ジャック・キャバリエ
対象性別:ユニセックス
「L’EAU D’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」は、香水の歴史をくつがえす伝説的な香りです。
先述しましたが、天才調香師ジャック・キャバリエは、当時「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」を調香するにあたって数週間ほど日本中を旅しました。
言わば日本とフランス、2つの芸術大国の特性がフュージョンし生み出された香水と言えるでしょう。
トップノートはロータス、フリージア、メロンといった、ほとばしるようにみずみずしい花の香り。
花そのものと言うより、花に落ちる朝露の香り、と言っても良いかもしれません。
可憐で爽やか、目が覚めるほど透き通っています。
ミドルノートはカーネーション、ホワイトリリー、シャクヤク、スズランと、ここでもクリーンでみずみずしい雰囲気は続きます
気分は「朝のマルシェの花屋さん」。
“水”には香りがないのに、“水のある風景”が不思議と浮かんでくるのです。

そしてラストノートはそのみずみずしさに人間味が加わっていきます。
チュベローズ、アンバー、ムスク、サンダルウッドがライトな香りに奥行きを持たせ、日本らしい奥ゆかしさと清潔感がありながらも、パリジェンヌのコケティッシュな色気もちょっとだけ含んでいます。
もちろん「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」は“水”をテーマにしているのですが、表現を付け足すならば、この香りには「新月」っぽい澄んだ雰囲気もあると思います。
清らかでクリーンで、新鮮です。
アニマリックな香水とは正反対の、自然を賛美した素晴らしい香り。
朝つけたての香りが「マルシェの花屋さん」であるのに対して、夕方にはおぼろげな「新月」となる。
ライトで着けやすい香りなのに、こうした粋なキャラクターを持っているのも、素敵です。
それまで人間の「欲」や「セクシャル」な部分を全面に出した香りが多かった香水業界において、「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」は何とも癒される、月の女神様のような存在となったのです。
年齢不問、今でも毎日使える“水”のような必須香水

「L’EAU D’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」には自己主張がなく、控えめで落ち着いた人間の魅力が凝縮されているように感じます。
そのため、オフィスやオフの日でも違和感なくまとうことができると思います。
香水嫌いで有名だった三宅一生氏がGOサインを出した「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」ですから、この香りが嫌がられることはまずないはずです。
もちろん年齢は問いません。
発売当時は女性寄り、と言われてきましたが、現代では男女どちらも気持ちよく使っていただけると思います。
ただ、冬にまとうにはちょっと肌寒く感じてしまうかもしれません。
その場合は暖かい部屋で、テレワークの気分転換や「巣ごもり香水」として活躍するでしょう。
花束で言ったら淡い色のブーケ、絵画で言ったらモネの睡蓮、場所はヨーロッパの湖。
そんな、癒される風景がとてもよく似合う香りです。
まとめ
“水”をテーマにした香水の中には、地中海や大西洋などをイメージした力強いものもありますが、「L’EAUD’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」は真逆で、静かでとても落ち着いています。
ファッションが華やかな時などは、このようにライトな香りが引き算となってバランスが取れるかもしれません。
さりげなく、誰にも嫌がられずに個性を演出できるので、香水の中では意外とマルチな活躍を見せてくれます。
透明感のある香りが欲しくなった時には、ぜひ「L’EAU D’ISSEY(ロードゥ・イッセイ)」を思い出してみてくださいね。

