デザイナーの川久保玲氏が立ち上げたコムデ ギャルソンは、日本を代表するファッションブランドです。

1969年の創立から50年以上日本の一流ブランドとして君臨しており、今でも「ギャルソン」の愛称で人々から憧れられる存在となっています。

現在では16のラインを持ち、渡辺淳弥氏、栗原たお氏、丸龍文人氏の3人のデザイナーとブランドを作っています。

そのラインはパリコレにも登場し、パリジャン達に一目置かれる存在となりました。

またコム デ ギャルソンはフレグランスも手がけていますが、調香、生産は現在フランスで行われているとのことです。

香水部門がスタートしたのは1994年。

「コム デ ギャルソン・パルファム」としてパリで口火を切りました。

ブランドのコンセプトは「アンチ・パフューム」で、従来の”装いを完成させる”のではなく、自分を奮い立たせる香り作りを目指しています。

独創的な香りが集まるコム デ ギャルソン・パルファムですが、そのなかでも圧倒的にスパイシーで猛々しいオードパルファムがあります。

それが、今回ご紹介する「Blackpepper(ブラックペッパー)」です。

「星が存在しない真っ暗な空」をイメージした重厚な香り「Blackpepper(ブラックペッパー)」。

まるでSF映画のラストシーンのような、骨太なフレグランスをご紹介します。

香りの肝となるブラックペッパー、紀元前は金と同価値だった

「Blackpepper(ブラックペッパー)」では名前の通り、香辛料の黒胡椒がふんだんに使われています。

肉食文化の欧米では今日でも食卓に欠かせないスパイスとなっており、古くは紀元前400年頃から取引が始まったとされています。

しかしその入手の難しさから、胡椒は金と同等の高価なものでした。

香りが良いだけでなく、食料の長期保存に役立つという点が貴重さに拍車を掛けたようです。

黒胡椒、白胡椒、赤胡椒などたくさんの種類がありますが、なかでも黒胡椒は果皮に辛み成分が多いため一番刺激的であるとされています。

「Blackpepper(ブラックペッパー)」の肝となっているのは、その黒胡椒です。

そしてこの香りの背景には、太古の人々の“スパイスをめぐる未知への絶え間ない探求と情熱”が詰まっているとのこと。

胡椒を求めた人々の果てしない冒険、その道中で見た真っ暗な闇夜とは。

ロマンに満ちたコム デ ギャルソンの香りを次でご説明します。

壮大なスパイシー・ウッディノートで己を鼓舞する

Blackpepper(ブラックペッパー)オードパルファム

ノート:ブラックペッパー、シダー、パチュリ、ウッド、トンカビーン、ムスク

発表年:2016年

調香師:不明

対象性別:男性

「Blackpepper(ブラックペッパー)」のトップノートは、パンチの効いたスパイスの香りで始まります。

あまりの豪快なスタートダッシュに、かつてのコムデ ギャルソンの「攻めた」姿勢を重ねずにはいられません。

ただ、イメージはゴロゴロした丸い黒胡椒、というよりはサラサラのパウダーとなったブラックペッパーでしょうか。

場所でいうと、やはり闇夜の、どこか果てしない砂漠に立たされているような気持ちになります。

攻撃的に始まるのに、その攻撃先をどこへ向ければいいのか分からない、ちょっとした絶望感もあります。

しかし、その「果てしなさ」がかえってこの香水に深みを持たせ、これから始まる壮大なストーリーを非常に上手に演出しています。

そしてスパイシーさは数分ほどで次のフェーズに。

今度はシダーという「森林」に場面が切り替わるのです。

ここでのウッディも非常に深いものとなります。ただ「乾燥した」イメージは徹頭徹尾続いており、同時に骨太な印象さえ抱きます。

森は味方にも敵にもなります。ある時は優しく包み込み、ある時は怒れる自然として私たちに辛い現実を叩きつけます。

そういった森林の「在り様」を考えさせられる、とてもワイルドで手ごわいミドルノート。

社会に置き換えてみると同じことが言えると思います。

優しいだけの世界は存在しませんし、辛いだけの世界もそう長くは続きません。

切磋琢磨しながら、己を鼓舞していく、そういった「バランス・均衡」がこのミドルノートで感じられるのです。

そんなミドルノートがしばらく続いたあと、数時間後にはガラっと表情が変わります。

トンカビーン、ムスクといった官能性が目を覚まし、辺りを桃源郷に導いていきます。

トップ、ミドルで見せたあの筋肉質なキャラクターは姿を消し、甘く切ないスキンノートで一気に人間味が増すのです。

先の香料と混じり、少しレザーの香りも漂います。

分かりやすく一言でいえば、「ダークヒーロー」でしょうか。

多くは語らず、例え味方がいなくとも自分の信じた道を突き進む。

孤独ですし、喜怒哀楽の表情もあまり似合いません。

しかし、ふと見せる生身の人間らしいしぐさに人は惹きつけられます。

そんな、SF映画の主人公のような「ロマンと反骨」に満ちあふれた香りです。

コム デ ギャルソン、フランスが得意とする「アンチテーゼ」がここで見事に凝縮されました。

責任ある大人の男性へ。シャネル愛好家にも

「Blackpepper(ブラックペッパー)」はトップノートとラストノートでだいぶ印象が変わります。

朝に着ければカリスマ性を伴う仕事人となり、夕方帰宅するころには温かい父性が生まれています。

オフィスには向かない、と言いたいところですが、ビジネスのシーンにとても良く似合うので、許されるならば量や場所を調節してまとえると思います。

ただただ「力強い」といったタイプの香りでもありません。

1本にたくさんの表情が詰まっていますので、男性の「責任を伴う痛み」や「プレッシャー」といった細かな心情までもキャッチした香水となっているのです。

例えが難しくなってしまいましたが、シンプルに言うとウッディ系がお好みの方には是非ともおすすめしたい香り。

特にシャネルの『ブルー』がお好きな人にはピンとくる香りだと思います。

年齢層は30代以上の、責任を感じるすべての大人の男性に。

70代、80代の方にも似合う素敵なオードパルファムです。

まとめ

コム デ ギャルソンのフレグランスは一見、気軽に使用してみるのは難しくも思えますが、手に取ってみると不思議と馴染み、「もしかしたら探していたものがこれだったのではないか」と思わせる魅力があります。

たくさんの香水が生まれている今日でも、「ギャルソンらしさ」はまったく失われていません。

高度で魅惑的な「Blackpepper(ブラックペッパー)」の香りに酔いしれてみてくださいね。