「香りの職人」を意味するパリ生まれのパフューム・メゾン、『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』。

香水愛好家の間でも一目置かれるニッチブランドで、その香りの良さ、ユニーク性で創業から40年以上たった今でも熱狂的なファンがあちこちに存在します。

こだわりの天然香料、ひねりのあるネーミングセンス。

個性を重視する“フランスらしさ”がギュッと詰まったパフューム・メゾンと言えるでしょう。

調香師であり創業者のジャン・ラポルトは、花々へ情熱を注いだ人物です。

フランス中西部、ブルゴーニュ地方の小さな村に自作の庭園を作り、その庭園で丹精込めて育てた花々からインスピレーションを得ていたそうです。

『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』の香りの魅力は、何といってもこの“自然美”が感じられる調香にあります。植物そのものの個性が際立っているのです。

没個性になりがちなフローラル、シトラス系の香りでも、このブランドにかかればたちまち

“通好み”のフレグランスに大変身。

そして不思議なことに全く飽きません。嗅覚が疲れないのです。

強い個性を感じつつも日常使いができる、理想的なフレグランスと言えるでしょう。

ブランドを象徴するフローラルの香りには、高貴なユリの花の香り「PASSAGED’ENFER(パッサージュ・ ダンフェ)」、爽やかなオレンジブロッサムが織り成す香り「HISTOIRE D’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」があります。

今回ご紹介するのは、日本での評価が大変高い「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」です。

職人技術と自然美が融合した、その美しいサマーフレグランスの魅力に迫ってみたいと思います。

夏のモロッコ、オレンジ色に染まる夕日にインスパイアされた香り

HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)オードパルファム

トップノート:ネロリ、ホワイトティー

ミドルノート:オレンジブロッサム、ムスク、モミアブソリュート

ラストノート:トンカビーン、アンバー

発表年:2017年

調香師:マリー・サラマーニュ

対象性別:ユニセックス

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」を創り出した女性調香師のマリー・サラマーニュは、次世代のスター調香師と呼ばれる期待の人物です。

彼女の作品にはメゾン・マルジェラの「レプリカ」シリーズの一作「バイ・ザ・ファイヤープレイス」、イヴサンローランの「ブラック・オピウム」など名作と呼ばれる香りが名を連ねています。

旅を愛するマリー・サラマーニュは若き日、モロッコはタルーダントの街を訪れていました。

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」は、そのタルーダントでの思い出から生まれたフレグランスです。

タルーダントは、街が全て城壁に囲まれた、モロッコ唯一の古代都市。

マリー・サラマーニュは、背景のアンティアトラス山脈、そして夕焼けに照らされたタルーダントの城壁という類まれな景色に心を奪われたのです。

その壮大な眺めは、その後ずっと彼女の中で残っていたそうです。

あの美しい瞬間を香りで表そうして生まれたのが、この「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」です。

出典:『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』公式インスタグラムより

まず、「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」のトップノートには度肝を抜かされます。もちろんそれは良い意味に他なりません。

初めてワンプッシュした時の、まるで“澄んだ空気が上がってくる”ような素晴らしい香り立ちは、おそらく多くの人の記憶に残るのではないでしょうか。

新鮮なネロリをそのままラッピングしたかのようなみずみずしさ。

そのパートナーのホワイトティーは高級紅茶ほどの上品さを醸し出していて、とても優雅。

決して強すぎず、主張も抑えめで、鼻腔が気持ち良い。

ちょうど“欲しい”ところの香りをこのトップノートで大変上手に表現しています。

トップノートからミドルノートの香りに大きな香りの変化はありませんが、次に続くオレンジブロッサムの香りは、感動するほどピュアで繊細です。

そして、ラストノートのアンバーとトンカビーンの優しさもまた素晴らしく、日差しを受けた肌に羽織るシルクのような質感です。

モロッコの壮大な夕日に香りをのせるとしたら、きっとこのアンバーが似合うことでしょう。

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」で使われているオレンジブロッサムは、最高峰のビターオレンジが収穫されるチュニジア産のものです。

ここで『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』がいかに植物を愛しているか、どれだけ自然に敬意を払っているかをお分かりいただけるかと思います。

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」は「オレンジの歴史」という意味。

これは、ただ人間が“食す”ためだけのオレンジの香りではなく、オレンジ生産を生業としてきた、北アフリカの伝統や歴史に対する憧憬・賛美の念が込められているのです。

ただのシトラス系、とカテゴライズするにはあまりにももったいない、デリケートでエレガントで、涙が出るほど美しい香り立ちです。

感動的な太陽の光と、ビターオレンジの木陰のコントラストをイメージしたこの香調は、フレッシュ・サニー・フローラル。

ネロリやオレンジブロッサムの香りも感じられるため、ややフルーティに近いフローラルノートと言えます。

夏向けの上品な香りをお求めの方に

出典:『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』公式インスタグラムより

石けんの香りと同様、オレンジの香りを嫌う人はほとんどいないはず。

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」は全ての老若男女に受け入れられる、軽やかなオレンジブロッサムの香りです。

チープさもなく、ズシンと来るような重い香りでもないので、20代後半~60代といった幅広い層の男女にお使いいただけるでしょう。

使い勝手の良い、と言っては角が立つようですが、日本の蒸し暑い夏でも不快に思わない香りは実はなかなか見つけるのが難しいもの。

ただライトな香り、というだけではなく、さりげない“趣味の良さ”をも演出してくれる頼もしい1本です。

4月後半から10月前半といった、太陽が明るい季節にこの香りはフィットします。

汗をかきにくい、そして鼻から遠い膝や腰にほんのりつけると、その上品さを余すことなく発揮できるでしょう。

デニムにコットンのブラウス、足元には履き心地の良いサンダル。

そんなコーディネートに「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」を添えれば、雰囲気も良くなりそうです。

この香りはまさに「見えないお洒落」。

「HISTOIRED’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」がアクセントとなって、いつものファッションをより輝かせてくれるはずです。

まとめ

『L’ArtisanParfumeur(ラルチザン・パフューマー)』は、例え香りに慣れている方でも、毎度“新しい発見”を可能にするブランドです。

本来の香水の在り方や、自然美に基づいた芸術的な香りを楽しみたい方に本当にお勧めです。

今回ご紹介した「HISTOIRE D’ORANGERS(イストワール・ド・オランジェ)」を通して、オレンジが持つ繊細な側面を発見してみてくださいね。